コラム
PFAS問題:「永遠の化学物質」が引き起こす環境汚染と健康への影響
PFASによる汚染が頻繁に報道されるようになっており、2026年には水道水質基準に追加されます。
そこで、最初のコラムではPFASを取り上げます。
PFASは特定の物質ではなく、フッ素を含有する特定の有機物の総称であり、自然界でほぼ分解されず、半永久的に残り続けることから「永遠の化学物質」とも呼ばれています。
PFASには1万以上の物質があると言われております。PFASの毒性については、まだ不明な点もありますが、毒性が明らかになったPFOS は 2010 年、PFOA は 2021 年、PFHxSは2024年に既に国内でも製造・輸入が禁止されています。PFASは、その耐熱性や耐水性、耐油性から、フライパンのコーティングや衣類の撥水加工など私たちの生活に身近な製品に広く使用されてきました。
PFASの問題が広く知られるようになったのは2019年に作成されたアメリカ映画“ダークウォーターズ”だと言われています。この映画はPFAS汚染による健康被害の訴訟に関するものです。原作の著者は訴訟に関与したアメリカの弁護士です。物語は1998年に異常な病気を発症した家畜のことを牧場主が弁護士に相談することから始まります。その後、汚染地域の住民の血液検査や大規模な疫学調査を行い、集団訴訟に発展していく経緯が詳細に描かれています。
日本国内ではPFOS とPFOAは水道水質基準を検討する前の目標設定項目に位置づけられており、環境省は、2026年春に水道水質基準にする方針を決定する様です。
一般的に環境規制の流れは、先ず、直接摂取する飲料水の水道水質基準を設けて、その後、環境水、土壌の環境基準、排水基準、廃棄物等の基準が設けられます。
PCB、アスベスト、フロン、テフロンは夢のように便利な物質として広く活用されてきました。一方で便利さの代償として人や生態系への有害性は今でも、大きな社会的課題と言えます。
参考:「毒の水 PFAS汚染に立ち向かったある弁護士の20年」 著者 ロバート・ビロット 翻訳 旦裕介 花伝社