コラム
大学での講義を通じて ― 環境測定分析の“今”を伝える
昨年より、大学にて環境分野の授業を担当させていただいている。テーマは「環境測定分析業界の事業内容と役割」。環境測定分析という専門分野が、社会の中でどのような意義を持ち、どのように進化してきたのかを学生の皆さんに伝える機会である。
講義では、まず自身の歩みから話を始める。1980年代に大学で環境分野を専攻した当時は、現在のように環境配慮が企業価値として評価される時代ではなく、就職も決して容易ではなかった。しかしその後、環境基準の整備やリスク評価の高度化が進み、環境測定・分析は社会基盤を支える専門技術として確立してきた。
講義内容は以下の構成である。
●化学物質が環境基準として規制されるまでのリスク評価の考え方
●最新の環境規制の動向
●注目される環境測定対象物質のトピックス
●環境測定・分析業務の実務と社会的意義
一方通行の講義とならないよう、5択問題を3問出題し、学生がスマートフォンで回答、結果をリアルタイムで集計して投影する形式を取り入れている。理解度の確認だけでなく、教室全体が“参加型”の空間となり、環境問題を自分事として考えるきっかけづくりにもなっている。

また、近年はSDGsの考え方が社会に広く浸透している。環境問題は「産業発展の制約」ではなく、「持続的成長の前提条件」であるという認識へと大きく転換してきた。この価値観の変化も、学生にとって重要な学びの一つである。
講義後のアンケートでは、次のような印象的な声をいただいた。
環境化学を学んでも企業で活かすことができないどころか、環境保護や環境保全の考えが産業発展の妨げになると思われたり、そもそも環境について学ぶことさえ難しい時代があったということに驚きました。
環境分析の仕事に対する世間の印象が時代とともに変化したと知り、仕事の必要性を一時的に考えるべきではないと感じた。
「ただ測るだけでなく、問題解決に向けた考察力が重要である」という言葉が心に残りました。
特に、最後の言葉は測定分析の本質を表している。測定値を出すことは出発点に過ぎない。重要なのは、そのデータをもとにリスクを評価し、原因を考察し、社会にとってより良い解決策へとつなげることである。
若い世代に環境測定・分析という業界を知っていただくことは、業界の将来にとって極めて重要である。高度な専門性と社会的責任を併せ持つこの分野が、正しく理解され、適切に評価される社会であり続けるよう、微力ながら今後も教育活動を通じて貢献していきたい。
